長い年月のかかる矯正治療も短期間で可能な時代
2023年3月14日
ワイヤー矯正治療は毎月ワイヤーの形を変えて歯を動かします
歯並びの乱れを整える歯列矯正は、数年単位の治療期間を要するケースがほとんどです。
これは一般的な虫歯や歯周病の治療とは比較にならないほど長いものです。
それだけに、矯正治療を受けようかどうか迷われている方もいらっしゃることかと思います。
しかし、現在は短時間での矯正治療を行えるケースも増えてきました。
矯正治療の長さがネックで治療を受けるか迷っている方は、ぜひ当記事を最後までお読みください。
歯列矯正はなぜ長い時間が必要なのか
まず知っておいていただきたいのが「歯列矯正には長い時間が必要な理由」です。
そもそも歯は顎の骨にしっかり固定されている
私たちの歯は、歯茎や歯根膜、歯槽骨などによって支えられています。
これらを総称して「歯周組織」といいます。
食事の際に硬いものをしっかり噛めるのも、それぞれの食材が持つ食感を楽しむことができるのも、この歯周組織が歯をしっかりと支えてくれているおかげです。
また、永久歯は一生涯使い続ける歯でもあることから、そう簡単に歯がグラついたり、移動したりしても困ります。
そのため、歯は顎の骨にしっかりと固定されているのです。
矯正治療は歯を損傷させずにゆっくりと移動させる治療
そんな歯を矯正装置によって強引に移動させるのが「歯列矯正」です。
とは言え、単に強い力を加えても、歯は思うように動いてくれません。
骨というのは、激しい変化に対応できる組織ではないため、力を加えてもその部分の歯や骨が折れるといった外傷を負ってしまうだけです。
そこで注目されるのが、歯列矯正における力の加え方です。
エッジワイズ法に代表される「ワイヤー矯正」では、弱い力を加えながら、少しずつ歯を動かしていきます。
その結果、歯の移動方向では骨が吸収し、後方では骨の再生が起こるのです。
これを「骨のリモデリング」といいます。
歯槽骨という硬い組織に埋まっている歯を適切に移動させるには、この現象を繰り返していく他ないのです。
この治療を無理やり短縮させても上手くはいきません。
強い矯正力を加えて、3年の治療期間を1年に短縮しようとすると、骨が吸収されていくばかりで再生が追いつかず、歯列矯正自体が失敗に終わります。
そして、こうした強引な処置は、顎の骨が壊死させたり、歯根が吸収されたりといったリスクも出てきてしまいます。
ご説明した通り、歯列矯正というのは、骨のリモデリングという生理現象に基づいて行われるものであるため、長い治療期間が必要です。
生まれ持った歯並びを人為的に変化させるというのは、それくらい大変なことなのです。
大幅に歯の矯正治療期間を短縮してくれる画期的な「IGOシステム」
IGOが適用可能なら3~6カ月で矯正治療ができます
この原理はワイヤーを使用しない「マウスピース矯正」でも同様です。
しかし、インビザラインという製品名で知られるマウスピース矯正における世界トップメーカーのアランテクノロジー社は、歯の大きな移動を必要とせず、3~6か月で矯正を終了する「IGOシステム」を開発しました。
IGOは膨大な矯正用マウスピースの作成に使ったビッグデータをコンピューターで解析します。
そして、この解析結果をもとに、矯正の検査時に必要なマウスピースを設計・製造するという画期的な方法を用いることで、短期間での治療終了を実現しているのです。
ただし、残念ながらすべてのケースでIGOが適用できるわけではありません。
矯正で歯の移動スペース確保のために抜歯を行う「便宜抜歯矯正」をする場合だと、マウスピース矯正でも年単位の時間がかかってしまいます。
また、IGOが適用可能かどうかは「Itero」と呼ばれるコンピューターの診断装置で判断する必要があります。
短時間で矯正治療を行える可能性もありますので、ぜひ歯科医院での検査とカウンセリングでお確かめください。
銀座の矯正歯科は銀座並木通り歯科
虫歯菌と歯周病菌について~虫歯と歯周病になる仕組みを解説~
2023年2月4日
虫歯と歯周病は代表的な口の中の疾患です。
虫歯は強い痛みがありますし、過去に治療で歯医者に行ってガリガリ削られたりしたことで「歯医者は痛い」「歯医者は怖い」といった印象の元になっている方が多いかもしれません。
一方で、歯周病は痛みがないまま症状が進行してしまうため、「サイレントキラー」という恐ろしい名前が付いています。
このように、対照的な虫歯と歯周病ですが、どちらも細菌が引き起こす感染症です。
とは言え、人は口の中に何百種類もの細菌を持っています。
そのため、感染症とは言っても、元々自分の口の中に持っていた細菌が引き起こすことがほとんどと言ってよいでしょう。
今回はこの虫歯菌と歯周病菌の特徴や虫歯・歯周病になってしまう原因を解説していきます。
虫歯はミュータンス菌と糖分が原因で発生
先ほど、虫歯や歯周病などの感染症は「元々自分の口の中に持っていた細菌が引き起こすことがほとんど」と言いましたが、虫歯を引き起こす菌の中で代表的なミュータンス菌は、生まれたばかりの乳児にはありません。
ミュータンス菌は口移しや食器の共用によって主に親から子に感染します。
3歳までミュータンス菌が感染しないように注意をすると、その後口腔内の虫歯菌が増えることはなくなり、かなり虫歯になりにくくなります。
とは言え、ミュータンス菌の感染を幼児の時に遮断するのは簡単ではありません。
残念ながらほとんどの人は虫歯菌に感染してしまいます。
また、虫歯は砂糖などの糖分を虫歯菌が分解して酸性の物質を作ることが原因です。
歯の表面はエナメル質という非常に硬い物質で覆われていますが、エナメル質の主成分は石灰で、酸には弱い物質でもあります。
そのため酸性の物質がエナメル質を溶かしてしまい、虫歯菌を歯の中に侵入させるのです。
歯は唾液中のカルシウム分、リン酸イオンにより再石灰化されます
歯周病は口腔内の細菌が変化したプラークが原因で発生
虫歯を作る原因になるのは主として糖分とミュータンス菌な一方で、歯周病は多種の口腔内の細菌が関係していると言われていることはご存じでしょうか。
まず、食べたものが口の中に残っていると、それらの口腔内の細菌がプラーク(歯垢)というネバネバした物質に変化します。
このプラークのように細菌が大量に繁殖してヌメヌメした物質は「バイオフィルム」と呼ばれています。
細菌の塊のバイオフィルムは、酸性物質なら歯の表面のエナメル質を溶かし虫歯になりますが、歯周病は歯ではなく歯茎に炎症を起こし、さらに歯茎そして歯を支えている骨の土台、歯槽骨を破壊しまうのです。
また、歯周病を引き起こす細菌は嫌気性といって空気を嫌う性質があります。
プラークが歯と歯茎の間のポケットと呼ばれる部分に入り込むと、そこは嫌気性細菌の絶好の住みかになります。
丁寧な歯磨きでプラークを毎日除去することが、歯周病の予防になによりも大切と言われているのはそのためです。
プラークは最近の格好の住みか
口腔内ケアをしないと虫歯と歯周病が同時に発生することも
プラークが取り除かれないと唾液の中に含まれる石灰分を吸収して歯石という硬い物質に変わります。
歯石にはプラークが付きやすく、嫌気性の細菌を守る培地のような存在になります。
歯磨きだけでプラークは完全には除去できません。
定期的な歯石除去が必要なのはこのためです。
歯石を作る元になる唾液中の石灰分は酸性の物質で、歯から失われた石灰分を補う再石灰化を行う働きもあります。
歯は石灰分を失う脱灰と再石灰化が繰り返し行われていて、そのバランスが崩れると虫歯になるのです。
歯石を作る時に、悪玉の唾液中の石灰分は虫歯から歯を守る役割も果たしています。
このような仕組みになっているので、歯石の付きやすい人は虫歯になりにくいとも言えます。
ただし、口腔内ケアをきちんとしないと虫歯と歯周病が同時に発生するリスクもあるのです。
虫歯菌と歯周病菌はどちらも困った存在ですが、人は細菌と共存して生きていかなければなりません。
除去することはできない以上、口腔内ケアで歯周病菌や虫歯菌が暴れ回らないようにすることが大切なのです。
銀座の歯医者は銀座並木通り歯科
マウスピース矯正はなぜブームになったのか
2023年1月9日
マウスピース矯正のインビザラインは矯正の戻りにも有効です
矯正というとワイヤーを歯に取り付けてするものと思われてきましたが、現在はマウスピース矯正が注目を浴びています。
マウスピース矯正はワイヤー矯正と違って「目立ちにくい」という利点があり、昔から使用されていましたが、実は最近まではそれほど普及はしていませんでした。
それが、ここ最近でブームとも言われるほど普及し始めたのはいったいなぜなのでしょうか。
このページではマウスピースが支持されている理由をご紹介していきます。
通院時に手間と時間をかけずに治療できるから
ワイヤー矯正は歯を動かすために、毎月来院してワイヤーを少しずつ歯を動かす方向に曲げていきます。
これは長い時間と高度な技術を必要とする作業です。
ワイヤー矯正治療は毎月の通院時にワイヤーの形を変えて歯を動かします
一方、マウスピース矯正ではワイヤーの代わりにマウスピースを製作します。
今までの方法だと、マウスピースの型取りをし、来院ごとにマウスピースを製作していたので、ワイヤー矯正以上に通院時に手間と時間がかかっていました。
これが最近までマウスピース矯正がブームになっていなかった理由と言えるでしょう。
ところが、当院で取り扱っている「インビザライン」をはじめ現在のマウスピースは、型取りではなく口腔内スキャナーで測定した歯並びに合わせて矯正用のマウスピースをコンピュータがデザインします。
マウスピースはコンピュータのデータを使って外部で製作され、通院時はその装着と矯正の進行状況をチェックするだけで済むことになりました。
つまり、通院時にかかる時間が大幅に短くなったのです。
インビザラインではコンピュータがマウスピースのデザインを行います
目立ちにくく痛みも軽いから
薄くて透明なマウスピースは、矯正中であることさえ他人に気付かれることはほとんどありません。
そして、目立たないだけではなく、ワイヤーブラケットのような異物感が非常に少なく、装着感が快適です。
それだけではありません。マウスピース矯正は、治療に伴う痛みもワイヤー矯正より軽い傾向にあります。
その理由は装置が滑らかな形状のため、口腔粘膜への直接的な刺激が少ないからです。
さらに、マウスピース矯正は比較的弱い力を働かせることから、歯が緩やかに移動します。
そのため、歯の移動時に生じる痛みも軽減されます。
歯のケアをしやすいので衛生的だから
マウスピースは食事と歯磨きの際には取り外すことができるのもメリットです。
矯正の治療前と同じように装置の存在を気にすることなく食事を楽しむことができます。
そして、歯磨きもしやすくなり、虫歯や歯周病のリスクを抑えることも可能です。
マウスピースは2週間ごとに交換されるので、装置に細菌が繁殖するといったおそれも少なく、衛生的と言えるでしょう。
ちなみに、マウスピースは医療用プラスチックから構成されており、金属アレルギーのリスクを避けることもできます。
このように、マウスピースは健康・衛生面においても利点が多いのです。
壊れにくく、万が一の場合も複製しやすい
マウスピース矯正は装置が故障したり、外れたりするトラブルも極めて少ないのも注目すべきポイントでしょう。
そして万が一マウスピース破損してしまった場合でも、コンピュータ上にデータが残っていますので、速やかに複製することが可能です。
ちなみに、コンピュータで測定したデータがあることにはもう一つメリットがあります。
データを元に治療計画が立案されているため、開始から終了までの工程を画像であらかじめ確認することができるのです。
矯正前後のイメージができるので、矯正に対する不安感も抑えることにつながります。
メリット多数!マウスピース矯正のブームは一過性ではありません
マウスピース矯正を成功させるには、1日20時間以上の装着が求められます。
しかし、マウスピース矯正のワイヤー矯正に対する優位は大きなものがあります。
多くの利点があるので、マウスピース矯正のブームは決して一過的なものではないでしょう。
マウスピース矯正が気になっている方は、ぜひ当院にお気軽にご相談ください。
IGOの適用が可能なら3~6カ月で矯正治療ができます
銀座の歯医者でマウスピース矯正なら銀座並木通り歯科
歯科治療を中断するとどうなる?通院をやめることで生じるリスク
2022年12月15日
歯科治療は途中で止めると後悔することも多いです
「歯医者は歯が痛くなったら行くところ」とお考えの方は多いのですが、虫歯は初期の段階では痛みません。
この段階で治療すれば、痛くないまま治療は終わりますし、場合によってはまったく削ることなく再石灰化(唾液中の石灰分が虫歯を修復する作用)によって虫歯の進行を食い止めることもできます。
また、抜髄といって神経を取る治療を行うと痛みはなくなりますが、実は歯の治療はそれからです。
「歯医者は痛くなったら行くところ」という認識だと、「抜髄で痛くなくなったから通院をやめる」という方もいます。
しかし、歯は痛くなくなっても治療が完了したわけではありません。
今回は、虫歯や歯周病の治療を途中で止めてしまうとどうなるのか、どのようなデメリットが生まれる可能性があるのかを解説していきます。
再治療の可能性が高まり、手間・時間・治療費がかかる
抜髄した歯には水で硬化する仮封材などを封入しますが、仮封材は歯と比べれば柔らかく、取れてしまう場合があります。
そのため、治療途中段階の処置で神経を取ったあとの根管に薬剤を入れ、最終的にはセラミック、金属などでできた技工物を詰めたり被せたりするのです。
こういった治療をする前に治療を止めてしまうと、根管の中に細菌が入り込んでさらに悪化してしまい、また歯医者に行かざるをえなくなります。
しかし、根管の再治療は最初に抜髄した時よりも難しいため、通院回数が余分にかかってしまいます。
当然ですがその分治療費もかかるので、良いことは何もありません。
二次虫歯になりやすく抜歯のリスクが高まる
治療が進んで噛み合わせや見た目を守るために「仮歯」とよばれる技工物を被せることがあります。
仮歯は仮封材を入れただけの状態と比べると見た目も良く、噛むのにも不自由を感じないので、そのまま仮歯を長く使ってしまうなんて方もいます。
しかし、仮歯は材質がプラスチックのため、割れたりすり減ったりしやすく、変色もしやすい材質です。
そのままにしてしまうと「二次虫歯」の発生にもつながります。
仮歯はあくまでも「仮」のものでしかなく、本格的な被せ物に置き換える必要があるのです。
本格的な被せ物をする前に通院しなくなってしまうのは、大きなリスクが伴います。
また、治療を放置してしまい虫歯が進むと、抜歯をしなければならないこともあります。
歯がない状態を放置すると「挺出(ていしゅつ)」といって、反対側の歯が出てきてしまったり、両側の歯が倒れこんできてしまったりする恐れも出てくるでしょう。
抜歯した歯がたとえ一本でも、残りの健康な歯全体に負荷がかかることで悪影響を受けます。
抜けた歯を放置することで咀嚼力や歯並びが、悪くなってしまう可能性があるので要注意ですよ。
気づかないうちに歯周病がどんどん進行してしまう
また、歯周病はどうでしょう。
歯周病は「サイレントキラー」と言われるように、痛みが出ないまま進行する病気です。
歯磨きを励行し、歯石を定期的に取るといった予防を続ける必要があります。
「歯医者は痛くなったら行くところ」と思って歯科医院に行かずにこういった予防を怠っていると、抜歯にいたるような深刻な状態まで歯周病が進行することもあります。
そこまでいかなくても、検診などで歯周病を指摘されて歯科医院で歯石を取ると、歯周病で炎症を起こした敏感な歯茎が痛んで、かなり出血をするといったケースもあるのです。
痛みを軽減する治療もあります!治療の中断は絶対にやめましょう
歯周病の検査はポケット(歯と歯茎の間の歯肉溝と呼ばれる部分)の深さを細い棒状の器具で調べますが、歯周病で歯肉炎を起こしているとチクチクと痛みます。
そのため、定期的にポケット検査をされるのが嫌と思う方もいるでしょう。
(歯医者に行って痛い目に遭ってしまうと、歯周病の治療を止めてしまいたくなってしまっても不思議ではありませんね……。)
歯周病は検査だけでも痛みが出ることもある
しかし、歯科医院に通いながら歯周病の治療をすれば、歯肉がどんどん引き締まってくると痛みは小さくなりますし、ポケットの深さが浅くなれば治療の励みになります。
将来的にもっと痛い目を見ないためには、定期的な通院が必須です。
特に歯周病は治療に終わりはなく、口腔内環境の維持、改善に勤め続けることが必要です。
ちなみに、歯石除去は麻酔を施して行うこともありますし、痛みが強い場合は麻酔をリクエストすることもできるので、安心してください。
虫歯も歯周病も治療の中断は必ずと言って良いほど悪い結果を招きます。
歯科治療は自己判断で中断なさらないようにお願いします。
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虫歯の治療は要注意!歯を残せる治療と残せない治療があります
2022年11月30日
歯を残すには治療法がキーです
「8020運動」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
「8020」とは「80歳で20本以上の歯を残そう」という意味です。
成人の歯は親知らずの4本を除くと28本ですから、8本以上歯を失わずに80歳を迎えようというスローガンです。
歯をできるだけ残すためには歯を失わないように予防し、万が一のときには適切な段階で適切な治療を受けなければいけません。
治療方法によっては結果的に歯を失ってしまうリスクを伴ってしまうものもあります。
今回は歯を残すための治療についてお話していきます。
そもそも日本人が歯を失う原因とその予防方法
日本人が歯を失う原因で一番多いのは歯周病です。
歯周病は歯茎の病気で虫歯ではありません。
しかし、虫歯と同じく歯周病を防ぐためには歯磨きの励行と定期的な歯石取りをすることが不可欠です。
つまり、何よりも病気にならないための予防が大切ということになります。
そして、歯周病以外の歯を失う原因の大半は虫歯です。
虫歯で歯を失わないために一番効果的なのは、虫歯にならないことです。
歯周病の予防と同じく歯磨きを励行することはもちろん、就寝前に糖分のあるものを食べることを避けるといった基本が大切です。
また、フッ素塗布も虫歯予防に有効です。
高濃度(1,000ppm以上)のフッ素を含有している歯磨き剤で磨くことも虫歯予防に効果があります。
歯を残すなら何よりも早期段階での治療が大切です
とは言っても、予防をしていても虫歯になることはあるでしょう。
しかし、痛みが出ない段階で治療を行うと、歯を削る範囲は少なくて済みます。
虫歯はC0からC4まで5段階に分けられますが、C0と呼ばれるごく初期の段階なら、フッ素塗布を行うことで歯の再石灰化という自己修復力を利用してまったく削ることなく虫歯の進行を止めることさえできるのです。
また、C0より少し進行したC1程度(この段階でも虫歯の痛みはありません)でも、レジンという合成樹脂を使ってごくわずかしか削らずに虫歯の治療が可能です。
なるべく削らず治療することを「MI(Minimal Intervention 最小限の浸潤))と呼びます。
MIの範囲で虫歯治療を行うことが歯のためには大切です。
痛みが出ている虫歯治療で歯を残すためには
虫歯の治療の仕方で歯の寿命が変わります
虫歯がさらに進行してC1からC2へ進んでいくと痛みが出てきます。
この段階で初めて歯医者に行くという人が依然として多数なのは残念ですが、ここまで来ると治療によって歯の寿命が変わってくるので、一刻も早く歯科医院に行ってください。
この段階での治療に覚えておきたいポイントがあります。
ある程度進んだ虫歯は治療後に詰め物や被せ物が必要になりますが、その時に虫歯の取り残しがあると、詰め物の中で虫歯が進行してしまうのです。
あるいは虫歯を取りきっていても、詰め物や被せ物の隙間から虫歯が発生してしまう場合もあります。
このように治療した後にできる虫歯を「二次虫歯」と呼びます。
二次虫歯ができる可能性を小さくするには、詰め物や被せ物が歯と強く密着していることが望ましいです。
その点で、セラミックとレジンは歯との化学的な結合を行ってくれる優れた材質です。
ちなみに歯科では、歯と詰め物や被せ物が化学的なレベルで結合していることを「接着」と呼びます。
これに対し、金属性の詰め物は機械的にはめ込む「合着」と呼ばれる方法で歯に固定します。
歯を残すためには唾液が混入しない治療が不可欠
虫歯の取り残しがなく、セラミックやレジンで歯をきちんと封印しても、それだけでは十分とは言えません。
特に痛みが出ていて、歯髄と呼ばれる神経が詰まった部分を治療する、あるいは神経を取り除く治療を行うときは、患部に唾液が混入しないことが非常に重要です。
唾液の混入がいけない理由は、唾液が細菌を大量に含んでいるからです。
唾液が患部に残ると時間が経ってから根の部分が炎症を起こす歯髄炎になる可能性がとても高くなります。
つまり、唾液を患部に混入させない、つまり無菌状態になるべく近い状態で治療を行うことが再治療を避けるためにもっとも大切なことなのです。
再治療になると歯を削るため、何度か再治療を繰り返すと歯質が失われ、被せ物もできなくなり、最後には抜歯することになってしまいます。
治療中に患部に唾液を混入させないためには、ラバーダムというゴムの被膜で治療個所を覆わなければいけません。
ラバーダムの使用は唾液の侵入を防ぐためには必須
虫歯治療は「ラバーダム装着の治療をしているか」がポイントの一つ
ところがラバーダムを歯の根の治療の時に装着する歯科医院は、日本では一部に過ぎません。
(これはラバーダム装着が手間と費用がかかることが理由です。)
しかし、世界標準ではラバーダムを装着して根の治療を行うのが常識になっています。
日本歯科医の治療技術は世界的に見て決して低くはないのですが、ラバーダム装着という点に絞ると遅れていると言わざるを得ないのが現実です。
歯の治療法が今後の歯の健康に大きく関わってくるので、歯科医選びの際はぜひ参考にしてください。
参照: 精密根管治療 マイクロスコープとラバーダムが根治を変えました
銀座の歯医者は銀座並木通り歯科
矯正治療は、抜歯?非抜歯?
2022年7月22日
矯正治療のための抜歯には抵抗がある人が多いです
矯正治療は歯並びを改善するための治療です。
しかし、その矯正治療をしようとして「抜歯が必要です」と言われてショックを受ける人は少なくありません。
特に虫歯でもない健全な歯であれば抜くことに抵抗があるのは当然です。
本当に抜歯しないと矯正できないのかと不安になってしまう方もいるでしょう。
しかし、必ずしも抜歯矯正がデメリットだらけというわけではないのです。
この記事では、抜歯矯正・非抜歯矯正のそれぞれの特徴や適用するべきケースなどについてお話していきます。
非抜歯で矯正治療を行う方法
矯正が必要なほど歯並びが悪くなってしまう原因の多くは、すべての歯がきれいに収まる顎のスペースが十分にないことです。
歯が収まりきらない口内は、ベンチシートを顎、歯を人としてたとえると、3人掛けのベンチシートに無理やり4人が座っているような状態です。
スペースが十分にない状態で歯列を整える、つまり非抜歯の矯正を行うには、以下の施術が必要になります。
奥歯の方向に歯を移動させる
一般的には非抜歯矯正は、「親知らず以外は抜歯しない矯正治療」とされています。
親知らずは、元々抜歯されることが多く、永久歯28本の中には入りません。
咀嚼にもあまり役に立たないため、いわば厄介者なのです。
この親知らずの抜歯だけで矯正を行うことができるのは比較的良い方法です。
とは言え、親知らずを抜いた分だけほかの歯を奥に移動させるのは、それだけ歯の移動距離が大きくなりますし、そもそも親知らずの抜歯だけで十分なスペースが得られるとは限りません。
歯列を歪曲させる
歯列は「Uの字」のような形状をしていますが、Uの字の歪曲の度合いを強めると、非抜歯を目指せることがあります。
ただし、歪曲の度合いが大きいと矯正をしても歯列の戻りが起きてしまう可能性が高くなったり、場合によってはひどい出っ歯のような見た目になってしまったりといった可能性もあるので注意が必要です。
歯を削る
歯の表層はエナメル質と呼ばれる硬い物質で覆われています。
このエナメル層を1歯につき0~0.3mmずつ削れば、10本なら2~3mm程度のスペースを作ることができます。
必要なスペースがそれほど多くない場合は適用できる方法です。
「可能であれば非抜歯矯正、難しければ抜歯矯正」がおすすめ
IGOが適用可能なら3-6カ月で矯正治療ができます
非抜歯矯正は適用できるケースではすぐれた方法です。
叢生(そうせい)と言って歯が前後にばらばらにずれており、歯列を整えるスペースに問題がない状態であれば、インビザラインの「IGO」を適用すれば3~6カ月ほどの期間で施術が完了します。
費用もかなり少なくて済む可能性もあります。
「非抜歯矯正か抜歯矯正」かは、二つの対立する方法があるというより、可能であれば非抜歯矯正、難しければ抜歯矯正を行うといった考えの方が良いでしょう。
抜歯か非抜歯かで矯正治療の良し悪しを判断するのはNG
インビザラインGOが適用できないようなケースの場合だと、矯正治療は2~3年ほどの長期治療になります。
また、場合によっては一度矯正した歯列が元に戻ってしまうようなケースもあります。
抜歯、非抜歯の判断も含めて「セファロ」という矯正専用のレントゲン装置で得られたデータをコンピュータでシミュレーションを行い、しっかりした診断と治療計画を立てることが大切です。
抜歯か非抜歯かで矯正治療の良し悪しを判断するのは避けるべきでしょう。
また、抜歯が必要になるのは、顎のスペースが足りないためです。
永久歯が生える前の8歳前後で顎を広げる一次矯正を行うと抜歯の可能性はずっと小さくなりますし、矯正治療自体が不必要になることもあります。
矯正治療は永久歯の生える前から始めるのが望ましいとも言えます。
小児矯正を行うことで抜歯の可能性を小さくできます
銀座の矯正歯科は銀座並木通り歯科
八重歯を放置しているとデメリットが多い?しっかり治すのがおすすめ
2022年6月11日
八重歯は可愛い?
八重歯とは、小さな牙のように飛び出している上の前歯のことを言います。
歯がきれいに揃わずバラバラの方向に生えている状態で、歯科では「叢生(そうせい)」と呼ばれるものの一種です。
牙のようにちょっと歯が飛び出しているわけですが、日本では「可愛い」と考える文化があり、八重歯を売りにしたアイドル歌手がいたこともありますね。
しかし、八重歯は小さな牙のように見えるという理由で、欧米ではあまり好まれていません。
少なくとも可愛いというより、歯並びが悪いと思われてしまうのです。
日本でも最近は八重歯を可愛いと思う人は減ってきたようです。
八重歯を放置することによるデメリット
歯周病や虫歯になりやすくなる
八重歯に限らず歯並びが整っていない叢生の状態だと、歯の間に食べ物がつまりやすくなります。
八重歯もそのままにしておくと、食物がつまることでプラーク(歯垢)が付着し、歯周病や虫歯になりやすくなるのも事実です。
歯並びが揃っていると歯周病や虫歯のリスクが減ります
噛み合わせが悪くなる
噛み合わせという点でも八重歯は好ましくありません。
例外もありますが、八重歯になるのは3番目の前歯である歯がほとんどです。
犬歯は歯の中で一番大きく丈夫な歯でもあります。
犬歯が八重歯のように飛び出していなければ、横方向に顎を滑らせた時に犬歯が誘導して奥歯に隙間ができる「犬歯誘導」が可能です。
これがバランスの良い噛み合わせとされています。
しかし、八重歯のように犬歯が飛び出してしまっているとそれは不可能です。
犬歯が八重歯になりやすい理由
犬歯が八重歯になりやすいのは、犬歯が永久歯の中で一番後に生えてくることが大きな原因。
つまり、犬歯が生えて来る時に、すでに顎のスペースが一杯になってしまっていると、飛び出して生えるしかなくなるのが八重歯なのです。
この現象は顎が小さいとより起きやすいので、きゃしゃな顔立ちの女性が八重歯になりがちです。
そのため、「八重歯は可愛い」と思われることにつながったのかもしれません。
しかし、正しい噛み合わせのためには八重歯は治した方が良いのは間違いありません。
八重歯を削ったり、抜いたりして解決しようと考える方もいるのですが、丈夫な犬歯は大切ですし、無理に抜いてしまうと大きく隙間ができることで両側の歯が倒れ込んでいくといった問題が起きます。
八重歯は矯正治療で治すのがおすすめ
基本的には八重歯は矯正治療で治すのがおすすめです。
多くの場合、八重歯の位置を動かすスペースを確保するために小臼歯を抜歯することになり(便宜抜歯と呼びます)、時間も費用も矯正必要です。
しかし、八重歯があると審美的評価がマイナスになってしまったり、何より虫歯や歯周病のリスクを下げたり、正しい噛み合わせを得たりすることにもつながるので、八重歯は治した方が良いでしょう。
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歯周病対策に歯石を取るべき理由
2022年5月6日
歯石除去が歯周病予防の第一歩です
歯石は歯周病を引き起こす原因です。
そもそも歯石は、口の中に残った食べ物が口腔内の細菌で分解されてできたプラーク(歯垢)が唾液の中の石灰分を吸収して石のように硬くなったもの。
(唾液の中には石灰分が含まれていて、「再石灰化」という現象で虫歯を進行するのを防ぐ働きがあるのですが、逆に歯石ができる原因にもなります。)
歯石は硬く歯と歯の間にこびりついてしまい、歯磨きで取り除くことはできません。
どんなに上手に歯磨きをしても完全にプラークを取り除くことは難しいので、歯石を取るためには定期的に歯科医院に通って除去が必要なのです。
歯石放置で起こる歯周病の危険性とは?
歯周病はプラークで繁殖した細菌が歯茎、そして歯を支える歯槽骨と呼ばれる骨の土台を侵す危険な感染症です。
(細菌が原因という意味で感染症と表現しましたが、風邪ように人から人に簡単にうつるわけではありません)
実は日本人の歯を失う最大の原因は虫歯ではなく、この歯周病なのです。
それだけではありません。
歯周病になると歯茎から出血するのですが、出血は細菌や細菌が作る毒素を全身に行き渡らせてしまうということにもなります。
現在では様々な病気や疾患と歯周病の関係がわかってきています。
たとえば、糖尿病は歯周病の合併症とまで言われているのです。
歯周病の程度はポケット(歯と歯の間の溝)の深さの測定で調べます
「歯石除去は不要」を主張する説があるものの…
そんな恐ろしい歯周病を予防する基本は、日々の歯磨きと歯石除去のための歯科医院でのクリーニングです。
とは言え、歯石取りは不要と言う説を唱える歯科医がいます。
その理由は、「歯周病を引き起こす細菌はプラークの中にいて、石化した歯石の中にはいないから」。
歯周病を防ぐのは毎日の丁寧なブラッシングやフロスによるプラークコントロールで、歯石自体を取っても歯周病予防にはならないという説です。
確かに毎日の口腔内ケアでプラークコントロールを行うことは大事です。
数ヶ月に一度だけの歯石除去のクリーニングだけでは歯周病は防げません。
また、石化した歯石内部の細菌は閉じ込められていて、直接歯茎を侵す危険性はありません。
しかし、だからと言って歯石除去は歯周病予防に無関係かというと決してそのようなことはありません。
歯石除去をしないと起こりうるリスク
まず、歯石があるとその周りにプラークが付着しやすくなります。
顕微鏡レベルで見ると、歯石の表面はザラザラしていてプラークがとても溜まりやすい状態なのです。
結果的に歯石が付着している歯肉(歯茎)だと、時間が経つことで炎症を起こしやすい事実が確かめられています。
そのため、歯石除去も歯周病予防に必要なことは間違いありません。
日常の歯磨きももちろん大切
歯石除去の施術が歯周病の治療にもなる
歯石は歯肉の表面に付いている場合なら通常のクリーニングで取ることができますが、次第に歯と歯茎の間にも付着していくことを忘れてはいけません。
歯肉の中深くにこびりついた歯石は、SRP(スケーリングルートプレーニング)という徹底した歯石除去をしますし、場合によっては切開して歯石除去を行うフラップ手術で取り除く必要があります。
(フラップ手術では歯周病に侵された部分の歯肉も除去します。)
SRPやフラップ手術で歯石を取り除くと、歯茎が引き締まり歯周病の症状が改善するのです。
また、このような方法を使っての歯石除去は、歯周病治療の基本にもなります。
歯周病対策は毎日の歯磨きと定期的な歯石除去
先ほども書いたように、定期的な歯石除去だけで歯周病を防ぐことはできません。
毎日の口腔内ケアが大切だということは事実です。
しかし、それでも「歯石除去は役に立たない」というのは俗説というよりデマに近いと言って良いでしょう。
そのようなことを言う歯科医がいるのは残念なことと言わざるを得ません。
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