長い年月のかかる矯正治療も短期間で可能な時代
2023年03月14日
ワイヤー矯正治療は毎月ワイヤーの形を変えて歯を動かします
歯並びの乱れを整える歯列矯正は、数年単位の治療期間を要するケースがほとんどです。
これは一般的な虫歯や歯周病の治療とは比較にならないほど長いものです。
それだけに、矯正治療を受けようかどうか迷われている方もいらっしゃることかと思います。
しかし、現在は短時間での矯正治療を行えるケースも増えてきました。
矯正治療の長さがネックで治療を受けるか迷っている方は、ぜひ当記事を最後までお読みください。
歯列矯正はなぜ長い時間が必要なのか
まず知っておいていただきたいのが「歯列矯正には長い時間が必要な理由」です。
そもそも歯は顎の骨にしっかり固定されている
私たちの歯は、歯茎や歯根膜、歯槽骨などによって支えられています。
これらを総称して「歯周組織」といいます。
食事の際に硬いものをしっかり噛めるのも、それぞれの食材が持つ食感を楽しむことができるのも、この歯周組織が歯をしっかりと支えてくれているおかげです。
また、永久歯は一生涯使い続ける歯でもあることから、そう簡単に歯がグラついたり、移動したりしても困ります。
そのため、歯は顎の骨にしっかりと固定されているのです。
矯正治療は歯を損傷させずにゆっくりと移動させる治療
そんな歯を矯正装置によって強引に移動させるのが「歯列矯正」です。
とは言え、単に強い力を加えても、歯は思うように動いてくれません。
骨というのは、激しい変化に対応できる組織ではないため、力を加えてもその部分の歯や骨が折れるといった外傷を負ってしまうだけです。
そこで注目されるのが、歯列矯正における力の加え方です。
エッジワイズ法に代表される「ワイヤー矯正」では、弱い力を加えながら、少しずつ歯を動かしていきます。
その結果、歯の移動方向では骨が吸収し、後方では骨の再生が起こるのです。
これを「骨のリモデリング」といいます。
歯槽骨という硬い組織に埋まっている歯を適切に移動させるには、この現象を繰り返していく他ないのです。
この治療を無理やり短縮させても上手くはいきません。
強い矯正力を加えて、3年の治療期間を1年に短縮しようとすると、骨が吸収されていくばかりで再生が追いつかず、歯列矯正自体が失敗に終わります。
そして、こうした強引な処置は、顎の骨が壊死させたり、歯根が吸収されたりといったリスクも出てきてしまいます。
ご説明した通り、歯列矯正というのは、骨のリモデリングという生理現象に基づいて行われるものであるため、長い治療期間が必要です。
生まれ持った歯並びを人為的に変化させるというのは、それくらい大変なことなのです。
大幅に歯の矯正治療期間を短縮してくれる画期的な「IGOシステム」
IGOが適用可能なら3~6カ月で矯正治療ができます
この原理はワイヤーを使用しない「マウスピース矯正」でも同様です。
しかし、インビザラインという製品名で知られるマウスピース矯正における世界トップメーカーのアランテクノロジー社は、歯の大きな移動を必要とせず、3~6か月で矯正を終了する「IGOシステム」を開発しました。
IGOは膨大な矯正用マウスピースの作成に使ったビッグデータをコンピューターで解析します。
そして、この解析結果をもとに、矯正の検査時に必要なマウスピースを設計・製造するという画期的な方法を用いることで、短期間での治療終了を実現しているのです。
ただし、残念ながらすべてのケースでIGOが適用できるわけではありません。
矯正で歯の移動スペース確保のために抜歯を行う「便宜抜歯矯正」をする場合だと、マウスピース矯正でも年単位の時間がかかってしまいます。
また、IGOが適用可能かどうかは「Itero」と呼ばれるコンピューターの診断装置で判断する必要があります。
短時間で矯正治療を行える可能性もありますので、ぜひ歯科医院での検査とカウンセリングでお確かめください。