インプラントの治療期間を大幅に縮める即時埋入と即時荷重
2021年05月11日
失った歯を補完するにはインプラントを装着する以外に入れ歯、ブリッジがありますが、咀嚼力や耐久性、装着感などインプラントは多くの面でもっとも優れています。ただ、インプラントは埋入したチタンネジが骨にしっかりと固着するオッセオインテグレーションというプロセスが必要です。
抜歯後すぐにインプラントを埋入するには適応性が重要
しっかりとしたオッセオインテグレーションを得るためには2−3ヶ月の期間がかかります。さらに、抜歯を行った時に、チタンネジを埋め込むのは2ヶ月程度は待つべきだというのが従来の考え方でした。インプラント治療の難点の一つは治療期間の長さがあります。
即時埋入(即日インプラントとも言います)とは何らかの理由で抜歯を行った時に、すぐにチタンネジを埋入する治療法です。抜歯とインプラント埋入の期間がなくなるので治療期間は当然短縮されますし、治療回数も減ることになります。
その上、抜歯後に起こる骨吸収を避けることができるために、インプラント埋入でしばしば必要となるGBR(骨造成の)の必要性も小さくなります。
良いことずくめのようですが、即時埋入がいつでも可能というわけではありません。まず、インプラントの埋入が抜歯後すぐに行われるため、抜歯した部分の外科的な回復を考慮に入れたインプラント体(チタンネジ)の埋入が必要です。
さらに感染症のリスクコントロール、抜歯した部位の処置もより慎重に行う必要があります。これらを行うためには抜歯個所が即時埋入に適応していることと高度な治療技術が要求されます。
抜歯後すぐにインプラント体を埋入する即時埋入と似た言葉に即時荷重があります。即時荷重とはインプラント体を装着してすぐに当日から仮歯で咀嚼できるようにする治療法です。即時荷重でない場合はインプラント体埋入後カ月を置いて上部構造(人工歯)を取り付けて咀嚼が可能になります。
即時荷重も即時埋入と同様に咀嚼の負荷を早くかけることにで回復期間を短縮させる効果を得ることができます。しかし、即時荷重も即時埋入と同じようにいくつかの条件を満たす必要があります。
まず重要なのは口腔内ケアがよく行われていることです。さらにインプラント体を埋め込む顎骨の密度が高くなくてはいけません。また、治療技術も即時埋入がそうであったように高いレベルが要求されます。
即時埋入も即時荷重も実際的なインプラント施術のオプションとなったのは最近です。数多くの成功例がすでに報告されていますが、インプラント全体に占める施術割合は高くはありません。また、繰り返しになりますが治療技術の高さ、適用条件は一般のインプラントより厳しくなります。
しかし、治療期間の長さはインプラントの弱点の一つです。日々進歩するインプラント治療の中で、即時埋入、即時荷重の重要性は高まってきています。
オッセオインテグレーションとは
オッセオインテグレーションはインプラント治療を開発したスウェーデンのブローネンマルクが1950年代に兎を使った実験で発見し、それを応用したインプラント治療を1960年代に確立しました。
インプラント施術で埋め込まれたチタンネジは組織が回復することでしっかりと骨に固定されるのは実はかなり複雑な過程です。骨とチタンネジの間は電子顕微鏡レベルで拡大するとコラーゲンの軟組織が形成されています。さらにチタンネジの表面と骨組織との間には何層かの化学的な結合があります。
インプラント施術でチタンネジを埋入した後、オッセオインテグレーションがしっかりとネジを固定するまで時間が必要です。また、オッセオインテグレーションがうまく形成されないとチタンネジが固定されずネジが脱落してしまうことがあります。この場合はインプラントは失敗になってしまいます。
オッセオインテグレーションでチタンネジと骨が分子レベルで固着する
インプラントの成功率を高めるためには様々な事に配慮する必要がありますが、チタンネジの表面を電子顕微鏡レベルでどのような状態にすればよいかはオッセオインテグレーションの成否を決める上で非常に重要です。
世界には100社とも言われるインプラント製造メーカーがありますが、チタンネジがオッセオインテグレーションに適しているかどうかはチタンネジの品質を左右します。そしてそこには電子顕微鏡レベルの材料技術の違いが関係しています。