インプラント周囲炎とは
2021年04月25日
インプラント周囲炎で退縮した歯茎の(説明図)
インプラントで装着した人工歯は虫歯になることはありません。また、根が腫れる根尖性歯周炎になることもありません。しかし、インプラントの歯周病であるインプラント周囲炎になることはあります。そして、インプラントは天然歯よりも歯周疾患を発症しやすい傾向にあります。
厳密にいうと、これらの病気は「歯周病」とは少し異なります。ただ、「インプラント周囲粘膜炎」は歯周病における「歯肉炎」、「インプラント周囲炎」は「歯周炎」とほぼ同じものと考えていただいて問題はありません。重要なのは、病気の原因です。
天然歯とインプラントを比較すると、「歯根膜の有無」という決定的な違いが浮き彫りになってきます。歯根膜は、歯と歯槽骨との間に存在する組織で、歯にかかる力を緩和するだけではなく、歯肉や歯槽骨へと血液供給も担っているのです。それが欠損したインプラントでは、自ずと歯周組織の免疫力も低下します。
歯周疾患は、歯周病菌に感染することで発症する細菌感染症であることから、免疫力の低下はそのまま発症リスクの上昇へとつながるのです。さらに、インプラント周囲病変は通常の歯周病よりも進行が速いことがわかっています。その速度はおよそ10~20倍程度といわれています。これもまた免疫力が低下していることに由来しています。
それから、インプラントは天然歯よりも歯垢や歯石などが沈着しやすい傾向にあることもまた、インプラント周囲炎などを引き起こしやすい原因といえます。もちろん、インプラントの上部構造は、セラミックなどで製作されていることから、比較的汚れが付きにくい傾向にあるのですが、インプラント周囲粘膜炎が進行し、歯肉の吸収などが目立ってくると、アバットメントやインプラント体そのものが露出します。そこに歯石等が形成されると、除去するのが極めて困難となるのです。
インプラントは定期的なメンテナンスが大切
このように、インプラントは天然歯と比べると歯周疾患にかかりやすく、進行速度も極めて速いことから、適切なケアの継続が必須といえます。インプラント周囲炎を可能な限り防ぐためにはインプラント後の定期的なメンテナンスは非常に大切です。