入れ歯だってちゃんと噛める!【認知症につながると不安な方へ】
2023年5月21日
歯を失うとインプラントやブリッジといった欠損した歯を補う治療をします。
入れ歯もその中の一つです。
失った歯の数が多くなるとブリッジは難しくなりますし、天然歯に近い咀嚼力を持つという点ではもっとも優れているインプラントでは、インプラントのチタンネジを埋入する土台となる骨が歯周病などによって歯槽骨が失われ不足している場合は、適用が難しくなります。(ただし、骨の増成により、かなりのケースではインプラントが可能です)。
入れ歯はこういったケースの際に有効な治療にはなりますが、入れ歯に対する抵抗感を持つ人は少なくありません。
この記事で、入れ歯で欠損した歯を補うことへの不安点を解消していきましょう。
入れ歯は皆同じ?いいえ違います
入れ歯への不安や抵抗感にはどんなものがある?
それでは入れ歯で考えられるリスクにはどんなものがあるのでしょうか。
もっとも大きい懸念点は咀嚼力の低下
「装着すると違和感がある」「痛い」「食べ物の味が違って感じられる」「入れ歯が動くのが不快」など、入れ歯への不満と悩みは多く寄せられます。
また、8020運動で「80歳に20本以上の歯を残すことが認知症を防ぐことにもなる」という認識が広まってきたため、入れ歯にすることで認知症につながるのではと考える方さえ多くいるのが現状です。
歯を残すことが認知症の防止につながるというのは、咀嚼力が維持されるかどうかにかかってきます。
確かに、入れ歯にすることで咀嚼力が落ちてしまった場合は、食べるものが制限される、あるいは食べることそのものの楽しみが減ることで、活動的な生活がしにくくなり認知症の進行を早めることになりかねません。
食事は人生の楽しみ。決して軽視してはいけません
入れ歯の固定方法次第では咀嚼力低下につながる恐れがあります
入れ歯で違和感を覚えたり、咀嚼力に不満が出たりする理由はいろいろあります。
もっとも大きい不満と言えば、入れ歯がしっかりと固定されていないばかりに、硬いものを天然歯のように噛み切ることができないという点です。
これは、入れ歯が金具(クラスプ)で歯に留められていて、いわば歯茎の上に乗ったような装着をしてしまっているからです。
入れ歯はクラスプで歯に留められています
また、入れ歯固定剤でなるべく動かないようにすることで、かえって固定剤の厚みで入れ歯の位置が一定しなくなったり、不潔になってしまったりというリスクにもつながります。
これに対し、インプラントはチタンネジを骨に固着した上に人工歯を装着するので、場合によっては天然歯以上に強く咀嚼することができます。
実際、インプラントはあまりに強く固定されるため、インプラントの対合歯(反対側の歯)の天然歯が痛んでしまわないように、噛み合わせを慎重に考慮して装着しなければいけないほどです。
インプラントでは人工歯はチタンネジの上に固定されています
入れ歯の固定の仕方を変えれば咀嚼力もしっかり回復します
しかし、保険適用に限らなければ、入れ歯にもインプラントに迫るようなしっかりとした咀嚼力を回復できる方法があります。
一つは「マグネット・デンチャー」と言われる方法で、留め金(クラスプ)の代わりに歯(支台歯)につけた磁石と磁石同士で入れ歯を固定させます。
マグネットデンチャーなら、固定する力が非常に強く、噛み合わせの位置も安定させることが可能です。
また、支台歯がない場合はインプラントを埋入し、それに磁石を装着するという方法もあります。
インプラントと入れ歯の両方を使うことで、インプラントに迫る咀嚼力を得ることができるのです。
もう一つは「コーヌスデンチャー」と呼ばれるタイプです。
コーヌスデンチャーは歯に内冠を付けて、茶筒の蓋をかぶせるように入れ歯を装着します。
茶筒の蓋を引っ張り上げようとすると外気の力でなかなか抜けないように、コーヌスデンチャーも強く固定され簡単に外れるということはありません。
コーヌスデンチャーの内冠
このように保険適用でない方法であれば、入れ歯でも硬いものを咀嚼できる可能性が高いです。
保険適用外の入れ歯の固定方法でも費用はそれほどかかりません
保険適用外となると費用が気になる方も多いかと思いますが、多くの場合で入れ歯は多数のインプラント埋入を行うよりも安く済みます。
また、外科処置をしなくて済みますし、顎の骨の厚みといった制限が少ないため、内科的疾患を考慮する必要もあまりありません。
より幅広い方が咀嚼力を回復できる可能性が高い方法と言えるでしょう。