虫歯の治療は要注意!歯を残せる治療と残せない治療があります
2022年11月30日
歯を残すには治療法がキーです
「8020運動」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
「8020」とは「80歳で20本以上の歯を残そう」という意味です。
成人の歯は親知らずの4本を除くと28本ですから、8本以上歯を失わずに80歳を迎えようというスローガンです。
歯をできるだけ残すためには歯を失わないように予防し、万が一のときには適切な段階で適切な治療を受けなければいけません。
治療方法によっては結果的に歯を失ってしまうリスクを伴ってしまうものもあります。
今回は歯を残すための治療についてお話していきます。
そもそも日本人が歯を失う原因とその予防方法
日本人が歯を失う原因で一番多いのは歯周病です。
歯周病は歯茎の病気で虫歯ではありません。
しかし、虫歯と同じく歯周病を防ぐためには歯磨きの励行と定期的な歯石取りをすることが不可欠です。
つまり、何よりも病気にならないための予防が大切ということになります。
そして、歯周病以外の歯を失う原因の大半は虫歯です。
虫歯で歯を失わないために一番効果的なのは、虫歯にならないことです。
歯周病の予防と同じく歯磨きを励行することはもちろん、就寝前に糖分のあるものを食べることを避けるといった基本が大切です。
また、フッ素塗布も虫歯予防に有効です。
高濃度(1,000ppm以上)のフッ素を含有している歯磨き剤で磨くことも虫歯予防に効果があります。
歯を残すなら何よりも早期段階での治療が大切です
とは言っても、予防をしていても虫歯になることはあるでしょう。
しかし、痛みが出ない段階で治療を行うと、歯を削る範囲は少なくて済みます。
虫歯はC0からC4まで5段階に分けられますが、C0と呼ばれるごく初期の段階なら、フッ素塗布を行うことで歯の再石灰化という自己修復力を利用してまったく削ることなく虫歯の進行を止めることさえできるのです。
また、C0より少し進行したC1程度(この段階でも虫歯の痛みはありません)でも、レジンという合成樹脂を使ってごくわずかしか削らずに虫歯の治療が可能です。
なるべく削らず治療することを「MI(Minimal Intervention 最小限の浸潤))と呼びます。
MIの範囲で虫歯治療を行うことが歯のためには大切です。
痛みが出ている虫歯治療で歯を残すためには
虫歯の治療の仕方で歯の寿命が変わります
虫歯がさらに進行してC1からC2へ進んでいくと痛みが出てきます。
この段階で初めて歯医者に行くという人が依然として多数なのは残念ですが、ここまで来ると治療によって歯の寿命が変わってくるので、一刻も早く歯科医院に行ってください。
この段階での治療に覚えておきたいポイントがあります。
ある程度進んだ虫歯は治療後に詰め物や被せ物が必要になりますが、その時に虫歯の取り残しがあると、詰め物の中で虫歯が進行してしまうのです。
あるいは虫歯を取りきっていても、詰め物や被せ物の隙間から虫歯が発生してしまう場合もあります。
このように治療した後にできる虫歯を「二次虫歯」と呼びます。
二次虫歯ができる可能性を小さくするには、詰め物や被せ物が歯と強く密着していることが望ましいです。
その点で、セラミックとレジンは歯との化学的な結合を行ってくれる優れた材質です。
ちなみに歯科では、歯と詰め物や被せ物が化学的なレベルで結合していることを「接着」と呼びます。
これに対し、金属性の詰め物は機械的にはめ込む「合着」と呼ばれる方法で歯に固定します。
歯を残すためには唾液が混入しない治療が不可欠
虫歯の取り残しがなく、セラミックやレジンで歯をきちんと封印しても、それだけでは十分とは言えません。
特に痛みが出ていて、歯髄と呼ばれる神経が詰まった部分を治療する、あるいは神経を取り除く治療を行うときは、患部に唾液が混入しないことが非常に重要です。
唾液の混入がいけない理由は、唾液が細菌を大量に含んでいるからです。
唾液が患部に残ると時間が経ってから根の部分が炎症を起こす歯髄炎になる可能性がとても高くなります。
つまり、唾液を患部に混入させない、つまり無菌状態になるべく近い状態で治療を行うことが再治療を避けるためにもっとも大切なことなのです。
再治療になると歯を削るため、何度か再治療を繰り返すと歯質が失われ、被せ物もできなくなり、最後には抜歯することになってしまいます。
治療中に患部に唾液を混入させないためには、ラバーダムというゴムの被膜で治療個所を覆わなければいけません。
ラバーダムの使用は唾液の侵入を防ぐためには必須
虫歯治療は「ラバーダム装着の治療をしているか」がポイントの一つ
ところがラバーダムを歯の根の治療の時に装着する歯科医院は、日本では一部に過ぎません。
(これはラバーダム装着が手間と費用がかかることが理由です。)
しかし、世界標準ではラバーダムを装着して根の治療を行うのが常識になっています。
日本歯科医の治療技術は世界的に見て決して低くはないのですが、ラバーダム装着という点に絞ると遅れていると言わざるを得ないのが現実です。
歯の治療法が今後の歯の健康に大きく関わってくるので、歯科医選びの際はぜひ参考にしてください。
参照: 精密根管治療 マイクロスコープとラバーダムが根治を変えました
銀座の歯医者は銀座並木通り歯科